特定募集情報等提供事業の届出とは?対象となる企業・要件をわかりやすく解説
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求人サイトや人材紹介プラットフォームなど、いわゆる「求人メディア」を運営する企業からよく寄せられる質問のひとつに、「特定募集情報等提供事業の届出は必要か」というものがあります。この届出は2022年(令和4年)10月1日施行の改正職業安定法で新設された制度で、求職者情報を収集して事業を行う場合に、事業開始前の届出が義務付けられているものです。本記事では、制度の概要から、届出が必要となる会社の具体例、届出の要件・手続き、通常の職業紹介事業との違いまで、実務上のポイントを整理して解説します。
1. 特定募集情報等提供事業とは
特定募集情報等提供事業とは、職業安定法上の「募集情報等提供事業」のうち、労働者になろうとする者(求職者)に関する情報を収集して行う募集情報等提供を指します(職業安定法第4条第7項)。
「募集情報等提供」自体は、求人情報・求職者情報を提供する行為全般を指す概念で、次の4つの類型が定められています(職業安定法第4条第6項)。
・ イ 労働者の募集を行う者等の依頼を受け、労働者の募集に関する情報を求職者等に提供すること
・ ロ 労働者の募集に関する情報を、求職者の職業選択を容易にする目的で収集し、求職者等に提供すること
・ ハ 求職者等の依頼を受け、求職者に関する情報を労働者の募集を行う者等に提供すること
・ ニ 求職者に関する情報を、募集を行う者の労働力確保を容易にする目的で収集し、募集を行う者等に提供すること
このうち、求職者に関する情報を「収集」して情報提供に用いる事業者(上記の口・二など)が「特定募集情報等提供事業者」に該当し、事業開始前に厚生労働大臣への届出が必要となります。
「求職者に関する情報」には、氏名等の個人情報だけでなく、メールアドレスや経歴、サイトの閲覧履歴なども含まれると解されています。会員登録機能やスカウト機能、閲覧履歴を利用したレコメンド機能などを持つ求人メディアは、該当する可能性が高い点に注意が必要です。
2. 通常の職業紹介事業との違い
特定募集情報等提供事業と職業紹介事業は、いずれも人材採用に関わる事業ですが、規制の根拠と重さが大きく異なります。両者を分ける最大のポイントは「あっせん」を行うかどうかです。
募集情報等提供事業は、求人情報又は求職者情報を提供するのみで、求人及び求職の申込みを受けず、雇用関係の成立のあっせんを行わない事業です。これに対し、職業紹介事業は、求人者と求職者の間に立って雇用関係の成立をあっせんする事業であり、厚生労働大臣の許可(有料の場合)が必要です。
| 項目 | 職業紹介事業 | (特定)募集情報等提供事業 |
| 行為の内容 | 求人者と求職者の間に立ち、雇用関係の成立をあっせんする | 求人情報・求職者情報を提供するのみで、あっせんは行わない |
| 規制の形式 | 許可制(厚生労働大臣許可) | 届出制(求職者情報を収集する場合のみ) |
| 求人・求職の申込みの受理 | 受ける | 受けない |
| 開始前の要件 | 財産的基礎、事務所要件、職業紹介責任者の選任・講習受講など | 事業者名称・所在地・サービス名称・URL等の届出事項の提出 |
| 手数料規制 | 手数料表の届出・上限規制あり | 特段の規制なし |
| 違反時の罰則 | 無許可営業は刑事罰の対象 | 無届出も刑事罰の対象(6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金) |
2-1. 「あっせん」とみなされる境界線
単なる情報提供のつもりで運営していても、運用の仕方次第では実質的に職業紹介とみなされ、無許可営業として扱われるリスクがあります。厚生労働省の考え方では、次のようなケースは「あっせん」に該当し、職業紹介事業の許可が必要とされています。
・ 求人者に紹介するために求職者を探索したうえで、当該求職者に応募を勧奨し、これに応じて求職の申込みをした者をあっせんするいわゆるスカウト行為を事業として行う場合
・ 「貴方にふさわしい仕事を面倒見る」「貴社に最適の人材を紹介する」等とうたい、あっせんしようとする求人・求職者の情報を個別に提供する場合
・ 宣伝広告の内容や、求職者・求人者との契約内容等から判断して、実質的にあっせんを行っていると認められる場合
求人メディアと有料職業紹介事業を同一企業内で併営する場合は、それぞれのサービスの機能や導線が明確に区分されているかどうかが、許可・届出双方の実務上の論点になります。求人メディア側で収集した求職者情報を職業紹介側に横流しするような設計になっていると、メディア部分も含めて全体が職業紹介事業とみなされる可能性があるため、事前に管轄の労働局へ相談しておくことが望ましいでしょう。
3. どのような会社が届出の対象となるか
特定募集情報等提供事業の届出が必要となるのは、求職者に関する情報を収集し、それを求人企業や他の職業紹介事業者等に提供する事業を行う会社です。具体的には、次のような事業モデルが対象となり得ます。
・ 会員登録制の求人サイト・転職サイト(求職者のプロフィール、職歴、希望条件等を収集するもの)
・ 企業から求職者へスカウトメールを送信できる「オファー型」求人メディア
・ インターネット上の公開情報等から求人情報・求職者情報を収集して提供するクローリング型サイト・アグリゲーションサービス
・ 求職者の閲覧履歴等をもとにレコメンドを行う求人プラットフォーム
・ 職業紹介事業者等から求人情報・求職者情報の提供依頼を受けて情報を提供するサービス
一方で、自社の採用情報を自社の採用ページに掲載するだけの場合は、第三者の求人情報を提供しているわけではないため、職業安定法上の「募集情報等提供事業」には該当せず、届出の対象にもなりません。他社の求人情報を取り扱う段階で、初めて募集情報等提供事業としての規制対象となります。
実際の届出実績を見ると、職業紹介事業や労働者派遣事業と兼業しながら求人メディアを運営する事業者も多く、単独の求人メディア事業者に限られた制度ではありません(令和5年10月1日時点の厚生労働省公表資料によれば、届出数952件のうち職業紹介事業と兼業する事業者が65.7%、労働者派遣事業と兼業する事業者が28.5%を占めています)。
4. 届出の要件・手続き
4-1. 届出事項
特定募集情報等提供事業の届出では、主に次の事項を届け出る必要があります。
・ 事業者の名称、所在地、電話番号等の基本情報
・ 提供する主なサービスの名称・サイトURL
・ 職業安定法第4条第6項各号のいずれの類型に該当するサービスか
届出内容は、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」に掲載されます。
4-2. 届出の方法
届出および事業概況報告書の提出は、原則としてオンライン(e-Gov電子申請)により行うこととされています。厚生労働省本省への電子申請が基本ルートとなり、書面による届出よりもオンライン申請が主流になっています。
4-3. 変更・廃止の届出
届出後に事業者名称やサービス内容など届出事項に変更が生じた場合は、変更日の翌日から30日以内に変更の届出が必要です。また、事業を廃止する場合は、廃止日から10日以内に廃止の届出をしなければなりません。
4-4. 罰則
特定募集情報等提供事業に該当するにもかかわらず届出をせずに事業を行った場合、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。求人メディアを新規に立ち上げる際は、サービス開始前に該当性の判断と届出の要否を確認しておくことが重要です。
5. 実務上のチェックポイント
・ 求人メディアが求職者の氏名・メールアドレス・経歴等の情報を「収集」する機能を持つかどうかを確認する
・ 求職者情報の収集がある場合、事業開始前に特定募集情報等提供事業の届出を行う(無届出のまま運営を開始しない)
・ スカウト機能や個別マッチング機能がある場合、職業紹介事業の許可が必要となる可能性があるため、機能ごとに該当性を整理する
・ 職業紹介事業と併営する場合は、情報提供部分とあっせん部分の業務フロー・利用規約上の切り分けを明確にする
・ 届出事項に変更が生じた場合は30日以内、廃止する場合は10日以内に届け出る
まとめ
特定募集情報等提供事業の届出は、求職者情報を収集して情報提供を行う求人メディア等に義務付けられた制度で、許可制の職業紹介事業とは規制の重さが異なります。もっとも、実際のサービス設計によっては「あっせん」に該当し、職業紹介事業の許可が必要になるケースも少なくありません。求人メディアの新規開設や、職業紹介事業との併営を検討されている場合は、サービスの機能ごとに該当性を整理したうえで、必要な許可・届出を漏れなく行うことが重要です。
当事務所では、有料職業紹介事業の許可申請から特定募集情報等提供事業の届出要否判定まで、一括してご相談を承っております。求人メディア・人材紹介事業の立ち上げをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。



