フリーランス法とは?発注事業者が押さえるべき7つの義務と実務対応【2026年最新版】
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フリーランス法とは?発注事業者が押さえるべき7つの義務と実務対応【2026年最新版】
はじめに
働き方の多様化にともない、企業に雇用されず個人で業務を請け負う「フリーランス」として働く人が増えています。しかし、フリーランスには労働基準法などの労働関係法令が適用されないため、取引先である企業(発注事業者)との間で立場が弱くなりがちで、報酬の不払いや一方的な契約解除といったトラブルが後を絶ちませんでした。
こうした状況を踏まえて制定されたのが、正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「フリーランス法」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、フリーランス新法とも呼ばれます)です。令和6年(2024年)11月1日に施行され、令和7年(2025年)11月には施行から1年が経過し、公正取引委員会による勧告事例も複数公表されるなど、実務での運用が本格化しています。
本コラムでは、フリーランスに業務を委託する企業の労務担当者の方に向けて、フリーランス法の基本的な内容と、実務上とくに注意すべきポイントを整理します。
1. フリーランス法の概要
| 項目 | 内容 |
| 正式名称 | 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 |
| 公布・施行 | 令和5年5月12日公布/令和6年11月1日施行 |
| 所管 | 取引の適正化に関する規定:公正取引委員会・中小企業庁 就業環境の整備に関する規定:厚生労働省 |
| 適用要件 | 資本金の額に関わらず、従業員を使用する発注事業者が対象(下請法のような資本金要件がないのが特徴) |
下請法は資本金1,000万円超の法人のみを規制対象としていますが、フリーランス法は資本金の額を問わず、従業員を1人でも使用していれば個人事業主であっても規制対象となり得る点が大きな特徴です。なお、下請法は令和8年(2026年)1月1日付けで「中小受託取引適正化法(取適法)」へと改正されており、フリーランス法とは適用対象や義務の範囲が一部異なるため、両法の適用関係を正しく整理しておく必要があります。
2. 「フリーランス」「発注事業者」の定義
特定受託事業者(フリーランス)
・ 個人であって、従業員を使用しないもの
・ 法人であって、代表者1名以外に役員がなく、かつ従業員を使用しないもの(いわゆる一人社長の会社)
業種の限定はなく、デザイナー・エンジニア・ライターといった専門職に限らず、建設業の一人親方、理美容師、講師、営業職など幅広い職種が該当し得ます。また、企業に雇用されている人が副業として個人で業務委託を受ける場合も、その副業に関しては「特定受託事業者」に当たります。
| 弁護士・税理士・社会保険労務士などの士業に対する業務委託(顧問契約や個別案件の外注など)も、受託する側が従業員を使用していなければフリーランス法の適用対象となり得るとされています。自社が他士業や外部専門家に業務を委託している場合も、委託先がこの定義に当てはまらないか確認が必要です。 |
業務委託事業者・特定業務委託事業者(発注事業者)
フリーランスに業務委託をする事業者を「業務委託事業者」といい、そのうち従業員を使用しているものを「特定業務委託事業者」といいます。特定業務委託事業者に該当すると、業務委託事業者よりも重い義務(後述する就業環境整備に関する4つの義務など)が課されます。
3. 発注事業者に課される7つの義務
フリーランス法では、取引の適正化と就業環境の整備の観点から、発注事業者に対して次の7つの義務を定めています。義務③~⑦は、6か月以上の業務委託を行う場合などに適用される規定が含まれます。
| 義務 | 概要 | 対象 |
| ①取引条件の明示 | 業務委託時に、業務内容・報酬額・支払期日等を書面またはメール等で明示する | 全ての業務委託事業者 |
| ②報酬の支払期日の設定・支払 | 給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う | 全ての業務委託事業者 |
| ③禁止行為(受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき等) | 正当な理由のない受領拒否、報酬減額、返品、著しく低い報酬額の設定等を禁止 | 特定業務委託事業者 (1か月以上の委託) |
| ④募集情報の的確表示 | 広告等でフリーランスを募集する際、虚偽・誤解を招く表示を禁止し、正確・最新の内容を保つ | 特定業務委託事業者 |
| ⑤育児介護等への配慮 | フリーランスの申出に応じ、妊娠・出産・育児・介護と業務を両立できるよう必要な配慮を行う | 特定業務委託事業者 (6か月以上の委託) |
| ⑥ハラスメント対策 | セクハラ・パワハラ等に関する相談体制の整備等、就業環境を害する言動への対応措置を講じる | 特定業務委託事業者 |
| ⑦中途解除等の事前予告・理由開示 | 契約を中途解除・不更新とする場合、原則30日前までに予告し、請求があれば理由を開示する | 特定業務委託事業者 (6か月以上の委託) |
このうち④育児介護等への配慮、⑤ハラスメント対策、⑥募集情報の的確表示、⑦中途解除の予告・理由開示の4つは、取適法(旧下請法)には存在しないフリーランス法独自の規定であり、就業環境の整備として厚生労働省が所管しています。社会保険労務士が労務管理の観点から支援できる部分は、主にこの4義務です。
4. 就業環境整備の4義務・実務対応のポイント
(1) ハラスメント対策に係る体制整備
・ ハラスメントに関する方針の明確化と周知・啓発
・ 相談窓口の設置と、相談対応者への適切な対応の実施
・ 相談者・行為者のプライバシー保護、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止
既に社内でハラスメント防止規程や相談窓口を整備している企業であれば、その対象にフリーランスとの取引も含める形で運用を拡張することが現実的な対応となります。
(2) 育児介護等と業務の両立に対する配慮
6か月以上の業務委託を行う場合、フリーランスから申出があったときは、就業日・時間の調整など必要な配慮を検討する義務があります。労働者に対する育児・介護休業法上の配慮とは制度の性質が異なる点に留意しつつ、申出があった際の対応フローをあらかじめ整理しておくことが望まれます。
(3) 中途解除等の事前予告・理由開示
6か月以上の業務委託を中途解除する場合や更新しないこととする場合は、原則として30日前までの予告が必要です。予告から契約満了までの間にフリーランスから理由の開示を求められた場合は、遅滞なく開示しなければなりません。継続的な業務委託契約を結んでいる企業は、契約終了の意思決定から実際の通知までのリードタイムを社内フローに組み込んでおく必要があります。
(4) 募集情報の的確表示
募集広告等において、氏名(名称)・住所(所在地)・連絡先・業務内容・就業場所・報酬のいずれかを欠く表示は「誤解を生じさせる表示」に該当し得るとされています。求人媒体やクラウドソーシングサイトへの掲載内容も点検が必要です。
5. 違反した場合の対応
フリーランス法に違反した場合、まずは公正取引委員会または厚生労働大臣による助言・指導、報告徴収、立入検査が行われ、改善が見られない場合には勧告、さらに勧告に従わない場合は企業名の公表や50万円以下の罰金の対象となり得ます。令和7年(2025年)以降、出版・放送・小売・情報通信・電気ガス業など幅広い業種で勧告事例が公表されており、取引条件の明示義務違反や報酬の支払期日違反が主な違反類型となっています。
| 振込手数料の取扱いにも注意が必要です。フリーランス法の解釈ガイドラインの改正により、令和8年(2026年)1月1日以降は、たとえフリーランスとの合意があったとしても、振込手数料をフリーランス負担とし報酬から差し引く取扱いは「報酬の減額」に該当するとされました。既存の契約書や支払実務にこの取扱いが残っていないか、確認をおすすめします。 |
6. まとめ
フリーランス法は、資本金要件のない幅広い発注事業者を対象とする法律であり、「うちは下請法の対象外だから関係ない」という認識では対応が漏れる可能性があります。とくに就業環境整備に関する4つの義務(ハラスメント対策・育児介護配慮・募集情報表示・中途解除予告)は、社内の労務管理体制の延長として整備できる部分が多く、既存の就業規則やハラスメント防止規程を土台に、フリーランスとの取引にも適用範囲を広げていくアプローチが有効です。
自社の業務委託契約書や社内規程がフリーランス法に対応できているか確認したい場合、あるいはハラスメント相談体制の整備についてご相談されたい場合は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。



