一般事業主行動計画の策定・届出についてー 次世代育成支援対策推進法・女性活躍推進法の実務ガイド
お知らせ
1. 一般事業主行動計画とは
「一般事業主行動計画」とは、事業主が従業員の仕事と子育て・家庭の両立や、女性活躍の推進に向けて具体的な数値目標と取組内容を定めた計画のことです。
根拠となる法律は主に以下の2つです。
| 法律名 | 目的・対象 | 計画期間 |
| 次世代育成支援対策推進法(次世代法) | 仕事と子育ての両立支援。従業員が子育てしやすい職場環境の整備が目的 | 2〜5年(2025年3月31日まで時限立法→延長予定) |
| 女性活躍推進法 | 職場における女性の活躍推進。採用・継続就業・管理職登用などを促進 | 2〜5年(2026年3月31日まで時限立法→恒久化の動き) |
※ 両法律とも定期的に改正・延長が行われています。最新の法令動向を確認した上で対応をご検討ください。
2. 義務の有無:従業員規模別の対応早見表
次世代法・女性活躍推進法ともに、従業員規模(常時使用する労働者数)によって義務の有無が異なります。
■ 次世代育成支援対策推進法(次世代法)
| 従業員規模 | 行動計画策定・届出 | 公表義務 | くるみん認定 |
| 101人以上 | 義務 | 義務 | 申請可能 |
| 100人以下 | 努力義務 | 努力義務 | 申請可能(特例あり) |
■ 女性活躍推進法
| 従業員規模 | 状況把握・課題分析 | 行動計画策定・届出 | 情報公表 |
| 301人以上 | 義務 | 義務 | 義務(8項目以上) |
| 101〜300人 | 義務 | 義務 | 義務(1項目以上) |
| 100人以下 | 努力義務 | 努力義務 | 努力義務 |
※ 「常時使用する労働者数」には、正社員のほかパート・アルバイト・契約社員等も含まれます。
3. 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画
(1)策定の流れ
次世代法に基づく行動計画は、以下の手順で策定します。
● 自社の現状把握(子育て中の従業員数、育児休業取得状況、労働時間等)
● 課題の抽出と目標設定
● 目標達成のための具体的な取組内容の決定
● 計画期間の設定(2〜5年)
● 行動計画の策定・社内周知
● 都道府県労働局への届出
● 外部への公表(自社ウェブサイト等)
(2)計画に盛り込む内容
行動計画には、次の事項を記載する必要があります。
● 計画期間
● 目標(数値目標を含む具体的な目標)
● 目標達成のための対策・その実施時期
(3)主な取組例
次世代法の行動計画に盛り込む取組として、以下のようなものが挙げられます。
| カテゴリ | 取組例 |
| 育児休業・休暇制度 | 育児休業取得率の向上、育児短時間勤務制度の整備、子の看護休暇の利用促進 |
| 労働時間の見直し | 所定外労働時間の削減、テレワーク・フレックスの導入 |
| 職場環境・意識改革 | 管理職向け研修の実施、育児休業復帰支援プログラムの整備 |
| 情報提供・相談体制 | 社内相談窓口の設置、育児に関する情報提供の強化 |
(4)くるみん認定・プラチナくるみん認定
行動計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした場合、都道府県労働局から「くるみん認定」または「プラチナくるみん認定」を受けることができます。認定を受けると、認定マーク(くるみんマーク)を商品・広告等に使用でき、採用活動や企業イメージの向上に活用できます。
| 認定種別 | 概要 | 主な要件 |
| くるみん認定 | 行動計画の目標達成と基準充足 | 男性育休取得率10%以上(または20日以上取得者が1割以上)等 |
| プラチナくるみん認定 | より高い水準の取組・実績 | 男性育休取得率30%以上等、くるみんの上位認定 |
| トライくるみん認定 | くるみん未満の段階での認定 | 育休等取得状況が一定水準以上の場合 |
4. 女性活躍推進法に基づく行動計画
(1)策定の流れ
女性活躍推進法に基づく行動計画は、「状況把握・課題分析」が出発点となります。
● STEP 1|女性活躍に関する状況把握・課題分析
○ STEP 2|数値目標の設定(2項目以上)
● STEP 3|取組内容と実施時期の決定
● STEP 4|行動計画の策定・社内周知・外部公表
● STEP 5|都道府県労働局(ハローワーク)への届出
● STEP 6|女性の活躍に関する情報の公表
(2)状況把握の項目
女性活躍推進法では、把握すべき情報が「基礎項目」と「選択項目」に分類されています。
| 区分 | 項目(例) |
| 基礎項目(必須) | ①採用した労働者に占める女性労働者の割合 ②男女の平均継続勤務年数の差異 ③管理職に占める女性労働者の割合 ④労働時間の状況 |
| 選択項目 | 男女別の育児休業取得率、女性管理職比率の推移、男女間賃金格差、配置・育成・評価等の実績 など |
※ 301人以上の企業は、基礎項目4項目すべての把握が必要です。100人以下は努力義務です。
(3)数値目標の設定
把握した状況・課題分析の結果に基づき、以下の区分の中から2項目以上の数値目標を設定します(101人以上の場合)。
● 採用に関する目標(例:女性採用比率○%以上)
● 継続就業に関する目標(例:女性の平均継続勤務年数○年以上)
● 労働時間等に関する目標(例:所定外労働時間○時間以下)
● 管理職比率に関する目標(例:管理職に占める女性比率○%以上)
(4)えるぼし認定・プラチナえるぼし認定
女性活躍推進法でも、行動計画の届出を行い、女性活躍に関する取組状況が優良な企業は「えるぼし認定」を受けることができます。
| 認定種別 | ランク | 概要 |
| えるぼし認定 | 1〜3段階 | 評価項目(採用・継続就業・労働時間等・管理職比率・多様なキャリアコース)の達成数に応じて段階認定 |
| プラチナえるぼし認定 | 最上位 | えるぼし(3段階)の上位認定。女性活躍推進の取組が特に優良な企業 |
5. 届出の方法と窓口
(1)届出先
いずれの法律に基づく行動計画も、都道府県労働局(ハローワーク)への届出が必要です。なお、女性活躍推進法については、電子申請システム「女性の活躍・両立支援総合サイト(両立支援のひろば)」からもオンラインで届け出ることができます。
(2)届出のタイミング
| 場面 | 対応 |
| 新たに策定したとき | 策定後、速やかに届出 |
| 計画を変更(目標・取組内容の変更等)したとき | 変更後、速やかに届出 |
| 計画期間が満了したとき | 新たな計画を策定して届出 |
| 従業員数が義務ライン(101人等)を超えたとき | 該当事業年度内に策定・届出 |
(3)電子申請について
女性活躍推進法については、「女性の活躍・両立支援総合サイト」(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/)にて行動計画の策定・変更・届出・情報公表をオンラインで一括処理できます。郵送・窓口持参のほか、このシステムの利用も便利です。
6. 情報の公表・周知義務
策定した行動計画は、従業員への周知および外部への公表が義務とされています(規模によっては努力義務)。
| 区分 | 周知方法 | 公表方法 |
| 次世代法(101人以上) | 社内イントラ、掲示板、書面配付など | 自社ウェブサイト、厚労省「両立支援のひろば」など |
| 女性活躍推進法(101人以上) | 同上 | 女性活躍に関する情報を「両立支援のひろば」等へ掲載 |
※ 301人以上の企業は、女性活躍情報として8項目以上の公表が義務付けられています(2022年4月改正)。
7. 男女の賃金差異の公表義務(301人以上)
2022年7月の女性活躍推進法施行規則改正により、常時雇用する労働者数が301人以上の企業には、男女の賃金差異(男性賃金に対する女性賃金の割合)の情報公表が義務付けられました(2022年7月8日施行)。
● 公表対象:全労働者・正規雇用労働者・非正規雇用労働者の3区分
● 公表頻度:年1回以上
● 公表方法:女性の活躍推進企業データベース、自社ウェブサイト等
※ 賃金差異の計算方法は、「男性の平均賃金に占める女性の平均賃金の割合(%)」です。詳細な算出方法は厚生労働省の指針をご確認ください。
8. 中小企業(100人以下)の対応ポイント
従業員100人以下の企業は、次世代法・女性活躍推進法ともに努力義務にとどまりますが、以下の点から積極的な取組がお勧めです。
● 採用競争力の向上:くるみん・えるぼしマークは求職者への強いアピールになります
● 助成金の活用:両立支援等助成金(出生時両立支援コース等)との組み合わせが可能
● 融資・入札での加点:一部の自治体・金融機関で認定取得企業を優遇
● 将来の義務化への備え:規模拡大時の対応がスムーズになります
9. 行政書士・社会保険労務士への相談をお勧めするケース
以下のようなケースでは、専門家へのご相談をお勧めします。
● 初めて行動計画を策定する場合(何から始めればよいかわからない)
● 従業員数が義務のボーダー(101人・301人)付近の場合
● くるみん・えるぼし認定を取得したい場合
● 男女賃金差異の公表方法・計算方法がわからない場合
● 育児・介護休業規程の整備も合わせて対応したい場合
● 両立支援等助成金も同時に活用したい場合
10. まとめ
一般事業主行動計画の策定・届出は、次世代育成支援対策推進法と女性活躍推進法のいずれにも関わる重要な義務です。規模に応じた対応が求められますが、認定取得や情報公表を積極的に活用することで、採用・定着・企業イメージ向上につながります。
| チェック項目 | 確認 |
| 自社の従業員規模(常時使用する労働者数)を把握している | □ |
| 次世代法・女性活躍推進法の義務有無を確認している | □ |
| 女性活躍に関する状況把握(基礎4項目)を実施している | □ |
| 数値目標(2項目以上)を含む行動計画を策定している | □ |
| 都道府県労働局に届出済みである | □ |
| 行動計画を社内に周知済みである | □ |
| 外部へ情報公表済みである(ウェブサイト等) | □ |
| 301人以上の場合、男女賃金差異を公表済みである | □ |
(執筆:岩元事務所 社会保険労務士)



