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試用期間中・入社14日以内の解雇手続き 試用期間の規定方法から解雇手続きの実務まで

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はじめに

新入社員の採用後、試用期間中に「この人材は自社に合わない」と判断するケースは珍しくありません。しかし、試用期間中であっても解雇は「解雇」であり、労働基準法に基づいた適切な手続きが必要です。

特に重要なのが「入社14日」という基準です。この14日を境に、手続き上の取り扱いが大きく異なります。本記事では、試用期間の設定方法から解雇手続きの実務、リスク管理まで、経営者・人事担当者が知っておくべき事項を解説します。

1|試用期間とは何か

試用期間の法的性質

試用期間とは、採用した労働者の能力・適性・人柄等を観察・評価するために設ける一定期間のことです。法律上は「解約権留保付労働契約」と解されており、正式採用後よりも広い範囲で解雇が認められていますが、「解雇権の濫用」は許されません(最高裁:三菱樹脂事件、1973年)。

試用期間中でも労働契約は成立しており、労働基準法・社会保険等の各種法律が適用されます。

試用期間に関する法律上の規定

試用期間について直接規定する条文は労働基準法にはありませんが、関連する重要規定として以下があります。

根拠条文 内容 ポイント
労基法第21条ただし書 試用期間中の者(14日超)への解雇予告義務 14日超えで予告義務発生
労基法第20条 解雇の30日前予告または解雇予告手当の支払い 試用期間中も原則適用
労基法第14条 有期労働契約の上限(原則3年) 試用期間の設定期間にも留意
就業規則の必須記載事項(労基法89条) 退職・解雇に関する事項の明示義務 試用期間の規定も要明示

2|試用期間の適切な設定方法

試用期間の長さ

試用期間の長さに法的な制限はありませんが、一般的には3か月が多く採用されています。長すぎる試用期間は、労働者の地位を不安定にするとして無効になる可能性があります。

試用期間 一般的な評価 留意点
1〜3か月 適切な範囲として広く認められる 短期間のため評価は迅速に
6か月 業種・職種によっては認められる 正当性の説明が必要になる場合あり
1年 原則として長すぎると判断されるリスクあり 高度専門職等で例外的に認められる場合も
1年超 原則として無効と判断される可能性が高い 裁判例で否定されたケースあり

 

就業規則・雇用契約書への規定

試用期間を設けるには、就業規則および雇用契約書に明記することが必須です。「試用期間中だから特別なルールは不要」という考えは誤りです。

【就業規則への記載例】

第○条(試用期間)

新たに採用した従業員については、採用の日から3か月間を試用期間とする。

2 前項の試用期間は、業務の都合により延長することがある。ただし、延長後の試用期間は通算6か月を超えないものとする。

3 試用期間中であっても、労働条件その他については正社員と同様の取り扱いとする。ただし、第○条(解雇)の規定にかかわらず、試用期間中に従業員として不適格と認めた場合は、解雇することがある。

試用期間延長の注意点

就業規則に延長規定を設けていても、延長には合理的な理由と本人への通知が必要です。無断延長・期間を定めない延長は無効となる可能性があります。

  • 延長の理由を書面で本人に伝える
  • 延長後の試用期間の終了日を明示する
  • 延長は原則1回とし、通算期間の上限を就業規則に定める

3|「入社14日」の考え方(解雇予告の適用除外)

労働基準法第21条の規定

労働基準法第20条では、解雇には原則として30日前の予告(または解雇予告手当の支払い)が必要ですが、第21条により試用期間中の者で採用後14日以内の場合は、この義務が除外されます。

法文(要旨) 労働基準法第21条 次の各号に掲げる労働者については第20条の規定は適用しない。ただし、第1号に掲げる労働者については14日を超えて引き続き使用するに至った場合においては、この限りでない。第1号:試みの使用期間中の者

「14日」の起算と考え方

この「14日」は暦日(カレンダー上の日数)です。労働基準法における日数の計算は特段の定めがない限り暦日で行うのが原則であり(民法第140条・141条)、土日祝日・欠勤日も日数に含まれます。また、14日の起算は実際の勤務開始日(入社日)からカウントします(初日不算入の原則により入社翌日が1日目)。就業規則上の試用期間開始日ではなく、実際に労働が開始された日が基準です。たとえば4月1日入社の場合、4月14日までが「14日以内」となります。「まだ2週間経っていない」という感覚的な判断は禁物で、入社日を起点に正確に計算することが重要です。

ケース 解雇予告の要否 解説
入社14日以内に解雇 不要 即日解雇が可能(解雇予告手当も不要)
入社15日目以降に解雇 必要 30日前予告または解雇予告手当が必要
試用期間中(14日超)に解雇 必要 試用期間内でも14日超えなら予告が必要
試用期間満了後に本採用拒否 必要 実質的に解雇として扱われる


「14日以内」でも守るべき事項

解雇予告は不要ですが、以下の点は14日以内の解雇であっても遵守が必要です。

  • 解雇理由を書面(解雇通知書)で明示すること
  • 社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを適切に行うこと
  • 未払い賃金は退職日から7日以内に支払うこと(労基法第23条)
  • 解雇の理由が客観的に合理的であること(解雇権濫用の禁止は適用される)

入社14日以内であっても「解雇権の濫用」は許されません。業務命令への通常の違反や単なる上司との性格の不一致のみを理由とする解雇は、後にトラブルになる可能性があります。

4|試用期間中の解雇が認められる理由・認められない理由

認められやすい解雇理由

試用期間は採用時に知り得なかった事実が判明した場合に解雇権を行使するための制度です。以下のような事由は、裁判例でも認められやすいとされています。

  1. 採用時の経歴・資格の虚偽申告が発覚した場合
  2. 業務遂行能力が採用時の説明と著しく乖離している場合
  3. 勤怠不良(無断欠勤・遅刻の繰り返し)が客観的に認められる場合
  4. 職場の秩序を著しく乱す言動(ハラスメント行為等)が確認された場合
  5. 業務に必要な免許・資格の取得が困難であることが判明した場合

認められにくい解雇理由

以下のような理由での解雇は、裁判で無効とされるリスクが高く、注意が必要です。

  • 「なんとなく合わない」「雰囲気が違う」等の抽象的・主観的な理由
  • 業務上の軽微なミス1〜2回のみを理由とする場合
  • 妊娠・出産・性別・国籍・思想信条等を理由とする場合(無効・違法)
  • 試用期間開始直後(教育・指導を全く行っていない段階)での解雇

試用期間中の解雇は通常の解雇より緩やかに認められるとはいえ、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」は依然として必要です(労働契約法第16条)。

5|試用期間中の解雇手続き(実務フロー)

手続きの全体フロー

ステップ 内容 タイミング
① 事実確認・記録 問題行動・能力不足の記録を整理(業務日誌、メール、面談記録等) 解雇決定前
② 面談・指導 改善を求める面談を実施し、記録を残す(14日超の場合は特に重要) 解雇決定前
③ 解雇決定 経営者・上位管理職で解雇を正式決定 解雇通知の前日まで
④ 解雇通知書の作成 解雇理由・解雇日を明記した書面を準備 本人への通知前
⑤ 本人への通知 面談の上、書面を直接交付(14日以内なら即日可) 解雇日当日または前日
⑥ 各種手続き 社会保険・雇用保険の資格喪失、賃金精算 退職日から5日以内(社保)

解雇通知書の記載事項

解雇通知書には以下の事項を必ず記載してください。口頭のみの通知は後日トラブルになりやすく、絶対に避けてください。

  • 宛名(労働者氏名)および会社名・代表者名
  • 解雇する旨の明示(「解雇」という言葉を明確に使用すること)
  • 解雇日(退職日)
  • 解雇の理由(具体的に記載)
  • 解雇予告手当の支払いがある場合はその金額・支払方法(14日超の場合)

入社14日以内と14日超で異なる手続き比較

項目 入社14日以内 入社14日超(試用期間中)
解雇予告 不要(即日解雇可) 30日前予告または解雇予告手当が必要
解雇予告手当 不要 平均賃金の30日分以上
解雇通知書 必要 必要
解雇理由の合理性 必要(解雇権濫用禁止は適用) 必要(通常の解雇より緩やかな基準)
社会保険の資格喪失 必要 必要
離職票の交付 希望があれば交付 希望があれば交付

6|試用期間満了後の「本採用拒否」の取り扱い

試用期間が満了した時点で本採用を拒否することも「解雇」に相当するとされています(最高裁判例)。そのため、本採用拒否の場合も以下の点に注意が必要です。

  • 試用期間満了前に本人に対して評価・懸念点を伝え、改善機会を与えること
  • 本採用拒否の理由は、試用期間中に具体的に確認された事実に基づくこと
  • 本採用拒否通知は書面で行うこと
  • 試用期間満了日を解雇日とした場合でも、解雇予告義務(30日)は適用される

試用期間が3か月の場合、本採用拒否を決定したのであれば満了の30日以上前(試用開始後60日目頃)には本人に告知するか、解雇予告手当を準備する必要があります。

7|社会保険・雇用保険の手続き

健康保険・厚生年金の資格喪失

試用期間中であっても、常用的な使用関係が認められれば入社初日から社会保険の加入義務があります。解雇・退職の場合は速やかに以下の手続きを行ってください。

  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届(退職日の翌日から5日以内)
  • 健康保険被保険者証の回収

雇用保険の手続き

  • 雇用保険 被保険者資格喪失届(退職日の翌々月10日まで)
  • 離職証明書の作成・交付(本人が希望する場合)
  • 離職理由は「解雇(重責解雇を除く)」として記載する

試用期間中の解雇で離職した場合、雇用保険の給付においては「会社都合退職」として扱われ、給付制限なしで基本手当を受給できます。離職理由の記載は正確に行ってください。

8|トラブルを防ぐためのリスク管理

記録の重要性

試用期間中の解雇が後日裁判・労働審判に発展した場合、会社側が解雇の合理性を立証しなければなりません。そのため、日常的な記録が非常に重要です。

  • 業務指示と結果を記録する(メール・業務日報等)
  • 指導・面談の内容を記録し、本人にも確認させる(面談記録書の作成)
  • 問題行動があった場合は、その都度書面(注意書・始末書等)で記録に残す

解雇前に確認すべきチェックリスト

  1. 就業規則に試用期間・解雇事由の規定はあるか
  2. 解雇理由が就業規則の解雇事由に該当するか
  3. 本人への指導・改善機会の付与は行ったか(14日超の場合)
  4. 解雇の事実を証明する客観的証拠(記録)はあるか
  5. 解雇予告または予告手当の準備はできているか(14日超の場合)
  6. 解雇通知書の準備はできているか
  7. 社会保険・雇用保険の手続きの準備はできているか

まとめ

試用期間中の解雇は、通常の解雇に比べてやや緩やかな基準が認められますが、適切な手続きと合理的な理由が不可欠です。特に以下の3点を押さえてください。

ポイント 内容
① 入社14日が分岐点 14日以内は解雇予告不要。14日を1日でも超えると30日前予告または解雇予告手当が必要。
② 試用期間の規定を整備する 就業規則・雇用契約書に試用期間の長さ・解雇事由を明記しておくことが、後日の紛争防止につながる。
③ 解雇には書面と理由が必要 試用期間中・14日以内であっても、解雇通知書の交付と合理的な解雇理由は必須。口頭のみの解雇は避ける。

試用期間中の解雇手続き、就業規則の整備、社会保険手続きについてお困りの際は、社会保険労務士岩元事務所にお気軽にご相談ください。

 

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的な案件については専門家にご相談ください。

 

 

 

 

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