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会社の備品を持ち帰った従業員への対処法

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今回は千代田区のIT業の経営者さまから以下のようなご質問をいただきました。
「会社の備品を持ち帰っている社員がいることがわかったのだが、どのように対処したらよいか」

ボールペンなどの文房具や、トイレットペーパー、お茶、コーヒーなどを自宅に持ち帰ることはもちろんよいことではありません。
許可を得ず会社のお金で買った備品を私物化することは、厳しい言い方をすると横領や窃盗に当たります。

ただし、解雇をできるかというと、解雇と言う処分は「重すぎる」と見なされることが多いでしょう。

1.備品の無断持ち帰りは法律上どう評価されるか

会社の備品を無断で自宅に持ち帰り私物化する行為は、法律的には次のように評価されます。

  • 業務上横領罪(刑法253条)または窃盗罪(刑法235条)に該当しうる
  • 就業規則上の懲戒事由(服務規律違反・会社財産の私的流用)に該当する
  • 金額や悪質性の程度によって、刑事告訴・民事損害賠償請求も選択肢に入る

ただし、実際の処分においては「行為の悪質性・金額・反復性」が重視されます。ボールペン1本と業務用PCでは、当然に評価が異なります。

2.「懲戒の相当性」という考え方

懲戒処分とは、従業員の非違行為に対して会社が科するペナルティです。その目的は「再発防止・行動の矯正」であり、単なる制裁ではありません。

労働契約法15条は「懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効」と定めています。裁判例においても、処分が行為の悪質性に対して不釣り合いな場合は「懲戒権の濫用」として無効とされてきました。

処分の重さの目安

行為の態様 相当とされる処分例 備考
文房具・消耗品などの少額品(初回) 口頭注意・始末書提出 事実確認・返還指示が先決
繰り返し持ち帰る・複数品目にわたる 戒告・減給・出勤停止 指導記録を積み上げたうえで
高額備品・継続的かつ悪質な行為 降格・諭旨解雇・懲戒解雇も検討可 就業規則の根拠条文確認が必須

 

3.発覚時の具体的な対応手順

STEP 1:事実確認と備品の返還請求

まず感情的にならず、冷静に事実を確認します。「いつ・何を・どの程度持ち帰ったか」を本人に確認し、持ち出した物品の返還を求めます。この段階で怒鳴ったり威圧的な態度をとると、後の対応で会社側が不利になる可能性があるため注意が必要です。

STEP 2:始末書の提出を求める

本人に始末書(経緯説明書)を書かせることで、「自らの行為を認識している」という事実を記録に残します。始末書の提出は、後に懲戒処分の段階を上げる際や、労使紛争になった際に重要な証拠となります。なお、本人が始末書の提出を拒否した場合は、その事実も記録しておきます。

STEP 3:口頭注意と指導記録の作成

注意・指導を行った日時・内容・場所・立会人を記録します。「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、指導記録は都度作成し保管しておくことが重要です。できれば上長や人事担当者も同席させるとよいでしょう。

STEP 4:再発防止策の検討

備品の保管場所を施錠管理する、消耗品の在庫台帳を整備するなど、「持ち出せない環境」を整えることも会社の責任です。また、職場全体へのルール周知も再発防止の観点から有効です。

STEP 5:再発した場合は段階的に処分を強化

注意・指導を繰り返してもなお同様の行為を続ける場合は、より重い懲戒処分(減給・出勤停止など)に移行できます。ただし、就業規則に処分根拠となる条文が明記されていることが前提です。就業規則に懲戒規定がない場合は、まず整備が必要です。

4.解雇はできるのか

「備品を盗まれたのだから即解雇できる」とお考えの経営者の方も多いですが、少額の消耗品の持ち帰りを理由とした懲戒解雇は「処分が重すぎる」として無効とされる可能性が高いです。

解雇は従業員の生活を根本から脅かす最も重い処分であるため、労働契約法上「解雇権濫用」の判断は厳格です。懲戒解雇が認められるには、次のような要件が必要です。

  1. 就業規則に懲戒解雇事由として当該行為が明記されている
  2. 行為の悪質性・被害額が重大である(反復・高額・計画的など)
  3. 指導・改善機会を与えたにもかかわらず改善しなかった実績がある
  4. 弁明の機会を与える手続きを踏んでいる

【重要】 懲戒処分は、就業規則に根拠規定がなければ有効に行うことができません。就業規則が未整備の場合や、懲戒規定が古い場合は、この機会に見直しをご検討ください。

よくある質問

Q1. 備品の無断持ち帰りで刑事告訴はできますか?

  1. 理論上は窃盗罪または業務上横領罪として告訴は可能ですが、少額の消耗品については実務上は受理・起訴されないケースがほとんどです。刑事告訴よりも、民事上の損害賠償請求や懲戒処分での対応が現実的です。

Q2. 損害賠償として給与から天引きできますか?

  1. 原則としてできません。労働基準法24条は「賃金は全額払い」を義務づけており、損害賠償との相殺は本人の同意がない限り違法となります。損害額の請求は、本人に任意弁済を求めるか、民事訴訟によることが必要です。

Q3. 就業規則に懲戒規定がない場合はどうすればよいですか?

  1. 就業規則のない会社、または懲戒規定が未整備の会社では、懲戒処分を有効に行うことができません。常時10人以上の従業員がいる場合は就業規則の作成・届出が義務です(労働基準法89条)。10人未満であっても、労働トラブル防止の観点から整備を強くお勧めします。

Q4. 本人が持ち帰りを否定した場合はどうすればよいですか?

  1. まず証拠を確保することが先決です。防犯カメラ映像・在庫台帳の差異・目撃証言などを収集します。証拠なしに一方的に処分すると、後に「不当処分」として争われる可能性があります。証拠収集の方法についてもご相談ください。

まとめ

  • 備品の無断持ち帰りは横領・窃盗に相当しうる行為だが、少額品への即解雇は「処分が重すぎる」として無効になるリスクが高い
  • 対応は「事実確認→始末書→口頭注意・指導記録→再発防止策→段階的処分強化」の順で行う
  • 懲戒処分は就業規則の根拠規定が必要。整備されていない場合は専門家に相談を
  • 給与からの天引きは原則として違法。損害請求は本人の任意弁済または民事手続きによる

備品の持ち帰り問題は、就業規則の整備や職場環境の改善で予防できる部分も多くあります。懲戒規定の見直し・整備や、職場トラブルへの対応にお困りの際は、岩元社会保険労務士事務所までお気軽にご相談ください。

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