「パパ・ママ育休プラス」の仕組みと活用法|1歳2か月まで延長できる要件と取得パターン
お知らせ
共働き世帯が増える中、男性の育児参加を促進し、夫婦で協力して子育てを行うための制度として「パパ・ママ育休プラス」が注目されています。 この制度は、両親がともに育児休業を取得する場合、法律上の育児休業期間を延長できる特例措置です。
本記事では、社会保険労務士の視点から、パパ・ママ育休プラスの基本的な要件、具体的な取得パターン、そして令和7年(2025年)4月から施行される新しい給付金制度との関連について詳しく解説します。
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1. パパ・ママ育休プラスとは?
「パパ・ママ育休プラス」とは、両親がともに育児休業を取得する場合に、一定の要件を満たすことで、育児・介護休業法の対象となる子の年齢が、原則「1歳に満たない子」から「原則1歳2か月に満たない子」まで延長される特例制度です。
通常、育児休業は子どもが1歳になる誕生日の前日までが原則ですが、この制度を利用することで、保育所に入れない等の「特別な事情」がなくても、休業期間の終了日(育児休業終了予定日)を「1歳2か月」まで後ろ倒しにすることが可能になります。
ただし、「1人あたりが取得できる休業期間」の上限が増えるわけではありません。 親1人につき取得できる期間は、これまで通り「最大1年間」です(母親の場合は、産後休業期間を含んで1年間)。 つまり、「休める期間の枠(期限)」が2か月延びる制度であり、「休める日数」そのものが増えるわけではない点に注意が必要です。
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2. 利用するための3つの要件
パパ・ママ育休プラスを利用するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1. 配偶者が育児休業を取得していること 育児休業を取得しようとする本人(例:パパ)の配偶者(例:ママ)が、子が1歳に達する日(誕生日の前日)以前において、育児休業(産後パパ育休を含む)をしていることが前提です。
2. 本人の育児休業開始日が、子の1歳の誕生日以前であること 延長されるのは終了日ですが、休業の「開始日」は、子どもが1歳になる前でなければなりません。1歳の誕生日を過ぎてから新たに育児休業を開始することは、この特例の対象外となります。
3. 本人の育児休業開始日が、配偶者の育児休業の初日以降であること 本人の休業開始予定日が、配偶者が取得している育児休業(産後パパ育休を含む)の初日と同じか、それよりも後である必要があります。
対象となる労働者
原則として、1歳2か月に満たない子を養育する男女の労働者が対象です(日々雇用を除く)。 有期雇用労働者(期間を定めて雇用される者)も対象ですが、申出時点において、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが要件となります(2歳までの延長の場合は2歳まで)。
また、労使協定を締結している場合、以下の労働者は対象外となることがあります。
• 入社1年未満の労働者
• 申出の日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
• 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
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3. 取得できる期間の上限(1歳2か月まで)
この制度の最大のポイントは、「いつまで休めるか」という期限と、「どれくらいの期間休めるか」という上限日数の関係です。
• 休業可能期間の延長: 子が1歳2か月に達する日まで。
• 最大取得日数(1人あたり): 1年間。
◦ 母親の場合: 出生後の産前・産後休業期間と育児休業期間を合わせて1年間です。
◦ 父親の場合: 育児休業期間として1年間です(産後パパ育休の日数も含みます)。
つまり、制度を利用しても、親1人が連続して1年2か月間休むことはできません。夫婦でうまく時期をずらしたり、交代したりすることで、子どもが1歳2か月になるまでの期間をカバーすることが可能になります。
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4. 具体的な取得パターンのシミュレーション
パパ・ママ育休プラスを活用することで、各家庭の状況に合わせた柔軟な育休取得が可能になります。厚生労働省の資料等に基づく代表的なパターンをご紹介します。
パターンA:ママの職場復帰後、パパがバトンタッチ(交代型)
ママが子が1歳になるタイミングで職場復帰し、入れ替わりでパパが育児休業を開始するパターンです。
• ママ: 産後休業 ~ 子が1歳まで育休を取得し、復帰。
• パパ: 子が1歳になる直前(例:誕生日の前日など)から育休を開始し、子が1歳2か月になるまで取得。
この場合、パパの育休開始日が「子の1歳の誕生日以前」であるため、要件を満たします。保育園の入所時期(4月など)に合わせて復帰時期を調整したい場合などに有効です。
パターンB:夫婦で時期を重ねて取得(重複型)
ママの育休後半にパパも育休を取得し、夫婦で協力して育児を行うパターンです。
• ママ: 産後休業 ~ 子が1歳2か月まで(産後休業含めトータル1年間)取得。
• パパ: 子が10か月などの時点から開始し、子が1歳2か月になるまで取得。
ママの出産日以後の産後休業・育休期間が合計1年以内であれば、ママ自身も1歳の誕生日を超えて(最大1歳2か月まで)休業を延長できます。パパも同時に休むことで、子育ての負担を分散できます。
パターンC:産後パパ育休との組み合わせ
男性版産休とも呼ばれる「産後パパ育休(出生時育児休業)」と組み合わせることも可能です。
• パパ: 出生後8週間以内に「産後パパ育休」を取得(最大4週間・2回分割可)。その後、子が1歳を迎える頃に再度、通常の「育児休業」を取得してパパ・ママ育休プラスを活用。
この場合、配偶者(ママ)が育児休業中であれば、パパの2回目の育休は1歳2か月まで延長の対象となります。
失敗しやすい注意点(対象外になるケース)
パパの育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日より「後」になってしまった場合は、パパ・ママ育休プラスの対象外となります。必ず「1歳の誕生日以前」に開始する必要があります。
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5. 令和7年(2025年)4月施行の改正法と新給付金
今後、育児休業制度はさらに拡充される予定です。特に注目すべきは、令和7年4月1日から施行予定の「出生後休業支援給付」です。これはパパ・ママ育休プラスとは別の制度ですが、夫婦での育休取得を強力に後押しするものです。
出生後休業支援給付(通称:出生後休業支援給付金)
これは、子の出生直後の一定期間内に、両親がともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前の給与の13%を追加で支給する制度です。
• 給付率: 既存の育児休業給付(67%)とあわせて給付率は80%手取り収入が休業前の10割相当まで保障されます。
• 対象期間: 男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内(出生後16週間以内)。
• 要件: 原則、両親ともに14日以上の育児休業(産後パパ育休含む)を取得すること。
◦ ※ひとり親の場合などは、配偶者の取得要件はありません。
この新制度は、主に「産後パパ育休」の時期の取得を促進するものですが、パパ・ママ育休プラスと併用することで、出生直後と1歳前後の両方の時期で、夫婦が協力して育児を行う体制を経済的にもサポートすることになります。
その他の改正点(令和7年4月・10月施行)
• 柔軟な働き方を実現するための措置: 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対し、事業主はテレワークや短時間勤務、新たな休暇制度などから2つ以上の措置を選んで講じる義務が生じます。
• 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大: これまで「3歳に満たない子」が対象でしたが、「小学校就学の始期に達するまでの子(小学校入学前)」まで拡大されます。
• 育児休業取得状況の公表義務: 公表義務のある企業の範囲が、従業員1,000人超から300人超へ拡大されます。
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6. パパ・ママ育休プラス利用時の手続きと社会保険料
申請手続き
パパ・ママ育休プラスを利用する場合、以下の確認書類が必要になることがあります。
• 配偶者が育児休業を取得していることを証明する書類(配偶者の育児休業取扱通知書など)
• 住民票の写しなど、配偶者との関係や同居を証明する書類
会社への申出期限は、原則として休業開始の1か月前までです(産後パパ育休は原則2週間前まで)。1歳を超えて延長する場合の申出期限についても、法律で定められたルールがありますので、就業規則を確認しましょう。
社会保険料の免除
パパ・ママ育休プラスを利用して1歳を超えて休業している期間中も、要件を満たせば社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は労使ともに免除されます。免除期間中も、将来の年金額には反映されますのでご安心ください。
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7. まとめ
パパ・ママ育休プラスは、保育園の入所時期の調整や、パパの育児参加を後押しするための有効な選択肢です。 「1歳」という区切りにとらわれず、夫婦のキャリアプランや家庭の事情に合わせて、1歳2か月までの期間を柔軟に設計することができます。
さらに令和7年からは、出生直後の育休取得に対する手厚い給付金(手取り10割相当)もスタートします。これから出産・育児を迎える従業員の方はもちろん、企業の人事労務担当者様も、これらの制度改正を正しく理解し、社内規定の整備や従業員への周知を行うことが重要です。
当事務所では、パパ・ママ育休プラスの具体的な申請手続きや、就業規則の改定、くるみん認定の取得支援など、育児・介護休業法に関するご相談を承っております。複雑な制度の運用について、ぜひお気軽にご相談ください。
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参考資料:
• 厚生労働省「育児・介護休業法における制度の概要」
• 厚生労働省「パパ・ママ育休プラス|育児休業制度特設サイト」
• 厚生労働省「出生後休業支援給付の簡易診断」
• 群馬労働局「男性の育児休業ここがポイント」
(注:本記事は令和7年4月施行予定の改正法情報を含んでいます。最新の法令に基づき運用を行ってください。)
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社会保険労務士・行政書士岩元事務所
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