「シフト制」で働く従業員がいる会社が今すぐ確認すべきこと
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「シフト制」で働く従業員がいる会社が今すぐ確認すべきこと
―厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和8年6月改正)をもとに社会保険労務士が解説―
パートタイマーやアルバイトを中心に、労働契約の締結時点では労働日・労働時間を確定せず、1週間や1か月など一定期間ごとに作成する勤務シフトによって初めて労働日・労働時間が決まる「シフト制」を採用する企業が増えています。人手不足への対応や需要の繁閑調整に有効な一方、「シフトを急に減らされた」「聞いていた条件と違う」といった労使トラブルも後を絶ちません。
厚生労働省は令和4年1月にシフト制労働者の適切な雇用管理に関する留意事項を公表し、令和8年6月19日付けで内容を改正しています。本稿では、この留意事項をもとに、シフト制で従業員を雇用する会社が押さえておくべきポイントを、労働契約の締結時・実際の就労時・契約終了時の3つの場面に分けて整理します。
1. 「シフト制」の定義を確認する
留意事項でいう「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務シフトなどによって初めて具体的な労働日・労働時間が確定する勤務形態を指します。あらかじめ勤務パターンが決まっている交替勤務制(三交替制など)とは区別される点に注意が必要です。年間や月間の労働日数・労働時間数自体が固定されており、就業規則に定めたパターンを組み合わせて配置する交替勤務は、この留意事項の対象外とされています。
2. 労働契約締結時の留意点
(1)労働条件の明示
労働契約の締結時には、契約期間、就業場所・従事する業務、始業・終業時刻、休憩・休日、賃金の決定方法・支払時期、退職(解雇の事由を含む)などを、原則として書面で明示しなければなりません(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条)。シフト制の場合、特に次の2点で不十分な明示が起こりがちです。
始業・終業時刻
労働条件通知書に単に「シフトによる」とだけ記載するのでは足りません。労働日ごとの始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載したうえで、契約締結と同時に一定期間分のシフト表をあわせて交付する必要があります。
休日
曜日が確定していない場合でも、休日設定の基本的な考え方(例:週1日以上、あるいは4週4日以上の考え方)を明示しなければなりません。4週4日の方式による場合は、起算日を就業規則等で明らかにしておく必要があります。
有期契約特有の明示事項(令和8年改正で追加・強化)
● 更新上限(通算契約期間・更新回数の上限)を設けている場合は、締結時・更新時のたびにその内容を明示すること
● 更新上限を新設・短縮する場合は、あらかじめ理由を説明すること
● 通算契約期間が5年を超えて更新される場合、その都度、無期転換を申し込める旨と転換後の労働条件を明示すること
● 転換後の処遇に正社員等との違いがある場合は、その理由(業務内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)を説明すること
実務上は、労働条件通知書の様式を見直し、更新上限・無期転換ルールの明示欄が最新の記載内容になっているかを確認しておくことをお勧めします。
(2)シフト制労働契約で定めることが望ましい事項
法律上の義務ではありませんが、トラブル防止の観点から、以下のようなルールを労使であらかじめ話し合って定めておくことが推奨されています。就業規則等で統一的に定めることも可能です。
シフトの作成・変更に関するルール
● シフト作成にあたり、事前に労働者の意見・希望を聴取する方法
● 確定したシフトを労働者に通知する期限・方法(例:毎月○日までにメールで通知)
● シフト期間開始前に労働日・労働時間の変更を申し出る場合の期限・手続
● シフト期間開始後に、確定していた労働日・労働時間をキャンセル・変更する場合の期限・手続
いったん確定したシフト上の労働日・労働時間の変更は、労働条件の変更にあたるため、使用者と労働者双方の合意が必要です(労働契約法8条)。会社が一方的に変更・キャンセルすることはできません。
労働日・労働時間の設定に関する基本的な考え方
● 一定期間中にシフトが入る可能性のある最大の日数・時間数・時間帯(例:毎週月・水・金曜から勤務日を指定)
● 一定期間中の目安となる労働日数・労働時間数(例:1か月○日程度/週平均○時間)
● 最低限保障する労働日数・時間数(例:1か月○日以上/毎週月曜は必ずシフトに入る)
(3)就業規則への規定
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、始業・終業時刻や休日に関する事項を就業規則に規定し、労働基準監督署へ届け出る義務があります(労働基準法89条1号)。シフト制労働者について「シフトによる」とのみ記載することは就業規則の作成義務を満たしたことにならず、基本となる始業・終業時刻や休日の考え方を定めたうえで「具体的にはシフトによる」とする必要があります。1か月単位の変形労働時間制を導入する場合は、始業・終業時刻の全パターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続・周知方法まで就業規則に定めておかなければなりません。
3. 実際に就労させる際の留意点
(1)労働時間・休憩
シフト制労働者であっても、1日8時間・週40時間の法定労働時間の原則は変わりません。これを超えて労働させる場合や法定休日に労働させる場合は、36協定の締結・届出が必要です。また、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を勤務の途中で与える必要があります。手待時間や来客対応の時間は休憩時間に算入できない点にも注意してください。
(2)年次有給休暇
所定労働日数・所定労働時間数に応じて、法定の年次有給休暇が発生します。所定労働日数をあらかじめ定めていないことを理由に付与しないことは認められません。所定労働日数の算出が難しい場合は、雇入れから6か月間(または前年)の実際の労働日数の実績を用いて算出する取扱いも認められています。付与日数が10日以上となる労働者については、年5日の時季指定義務(労働基準法39条7項)の対象となる点もあわせて確認が必要です。
(3)休業手当
会社の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります(労働基準法26条)。「その日のシフトを会社都合で急に無くした」場合も、休業手当の支払いが必要となるケースがあるため、シフトの急な削減には注意が必要です。なお、不可抗力に該当する場合を除き、使用者側の事情による休業は原則として休業手当の対象となります。
(4)安全衛生
労働安全衛生法に基づく安全衛生教育や健康診断の実施義務は、シフト制労働者であることを理由に免除されるものではありません。業務量の変動により一時的に勤務日数・労働時間数が減少した労働者についても、健康診断やストレスチェックの実施対象に含めることが望まれます。
4. 契約終了に関する留意点
(1)解雇・雇止め
有期契約のシフト制労働者を契約期間の途中で解雇するには「やむを得ない事由」が必要です(労働契約法17条1項)。無期契約の場合も、客観的合理性と社会通念上の相当性がなければ解雇は無効となります(同法16条)。解雇する場合は、少なくとも30日前の予告か、平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。また、3回以上更新された有期契約や、雇入れから1年を超えて継続勤務している労働者を雇止めする場合は、契約満了日の30日前までの予告が求められます。
(2)無期転換ルール
有期契約が1回以上更新され、通算契約期間が5年を超えた場合、労働者からの申込みにより無期労働契約に転換します(労働契約法18条)。シフト制労働者が無期転換の申込みをしたことを理由に、シフトの頻度を一方的に減らすといった不利益取扱いは認められません。
(3)不合理な待遇差の禁止
シフト制労働者がパートタイム労働者・有期雇用労働者に該当する場合、通勤手当の支給やシフト減少に伴う手当の支払いについて、正社員との間で不合理な待遇差が生じないよう留意する必要があります(パートタイム・有期雇用労働法8条)。比較対象となる正社員側の待遇を、労使合意なく引き下げることも望ましくないとされています。
5. 募集時の労働条件明示
求人票等で労働者を募集する際にも、業務内容・賃金・労働時間等の労働条件を明示する必要があります(職業安定法5条の3第1項・第2項)。募集時に示した条件を契約締結までに変更する場合は、変更内容の明示も必要です。シフト制であることを前提とした募集を行う場合は、契約締結時と同様の考え方で、労働日・労働時間の決まり方をできる限り具体的に記載することが望まれます。
6. 社会保険・労働保険の適用
シフト制労働者であっても、労災保険はすべて適用対象です。雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上(令和10年10月からは10時間以上に変更予定)であり、31日以上の雇用が見込まれる場合に被保険者となります。シフトが直前まで確定しない場合は、実際の勤務時間の実績に基づいて平均労働時間を算定します。健康保険・厚生年金保険についても、正社員の4分の3基準、またはいわゆる4分の3未満要件(週20時間以上、月額賃金8.8万円以上等)を満たせば加入対象となります。加入要件の判定を怠ると、後日さかのぼって加入手続や保険料の追徴が必要になることもあるため、シフトの実態を踏まえた定期的な確認が重要です。
7. シフト制労働契約 簡易チェックリスト
自社の運用状況を、以下のチェックリストで確認してみてください。
| 確認事項 | 根拠条文等 |
| 契約締結時、始業・終業時刻や休日を書面(労働条件通知書)で明示しているか | 労基法15条1項、労基則5条 |
| 「シフトによる」とだけ記載せず、原則的な始業・終業時刻とシフト表を併せて交付しているか | 留意事項1(2)(ア) |
| 有期契約の場合、更新上限の有無・内容を明示しているか | 労基則5条1項1号の2 |
| 通算5年を超える更新の際、無期転換の申込機会と転換後の労働条件を明示しているか | 労基則5条5項・6項 |
| 常時10人以上を使用する事業場で、始業・終業時刻や休日を就業規則に規定し届出しているか | 労基法89条1号 |
| シフトの作成・変更・キャンセルに関するルールを労使で取り決めているか | 留意事項1(2) |
| 1日8時間・週40時間を超える場合に36協定を締結・届出しているか | 労基法32条・36条 |
| 6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上の休憩を付与しているか | 労基法34条1項 |
| 所定労働日数に応じた年次有給休暇を付与し、請求された時季に取得させているか | 労基法39条 |
| 会社都合の休業の場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払っているか | 労基法26条 |
| シフト減少期間も含め、健康診断・ストレスチェックの対象から外していないか | 安衛法59条・66条等 |
| 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入要件を満たす者を適正に加入させているか | 雇保法、健保法、厚年法 |
まとめ
シフト制は、企業にとって柔軟な人員配置を可能にする一方、労働条件の明示や運用ルールが曖昧なままだと労使トラブルの火種になりやすい制度です。特に令和8年6月の改正では、有期契約の更新上限・無期転換に関する明示事項が強化されており、労働条件通知書や就業規則の記載内容を見直す必要がある企業も少なくありません。
自社の労働条件通知書や就業規則がシフト制の実態に即した内容になっているか、一度専門家によるチェックを受けることをお勧めします。当事務所では、シフト制を導入している企業様の労働条件通知書・就業規則の整備、36協定の締結・届出、年次有給休暇や休業手当の運用相談など、幅広く対応しております。お気軽にご相談ください。
参考:厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html



