高額療養費と限度額認定について
ブログ
病気やケガで医療機関にかかる際、治療が長期に及ぶと自己負担額が高額になることがあります。健康保険には、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分について払い戻しを受けられる「高額療養費」制度と、窓口での支払いを最初から限度額に抑えられる「限度額適用認定証」制度があります。本記事では、この2つの制度の内容と違い、会社として従業員をサポートする際のポイントを解説します。
1.高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、同一月(1日から末日)に医療機関や薬局の窓口で支払った額が「自己負担限度額」を超えた場合に、その超えた金額が健康保険から払い戻される制度です。
なお、入院時の食事代や差額ベッド代、保険適用外の費用は対象外です。
■ 自己負担限度額(70歳未満の方)
自己負担限度額は、年齢および所得区分(標準報酬月額)に応じて以下のとおり設定されています。
| 区分 | 標準報酬月額 | 自己負担限度額 |
|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
| イ | 53万〜79万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
| ウ | 28万〜50万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
| エ | 26万円以下 | 57,600円 |
| オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
※ 「多数回該当」として同一世帯で直近12ヵ月以内に3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降は限度額が軽減されます。
■ 計算例
標準報酬月額36万円(区分ウ)の方が、総医療費60万円の入院をした場合:
80,100円+(600,000円-267,000円)×1%=83,430円
この場合、窓口での3割負担(180,000円)から83,430円を差し引いた約96,570円が払い戻されます。
■ 申請方法と注意点
・診療月の翌月1日から起算して2年以内に、加入している健康保険組合または協会けんぽへ申請します。
・審査・払い戻しまでに通常3ヵ月以上かかります。一時的に高額の立替が必要となる点に注意が必要です。
・同月内に複数の医療機関を受診した場合は、合算して申請することができます(70,707円以上の窓口負担分のみ合算対象)。
2.限度額適用認定証とは
「限度額適用認定証」は、入院前または診療前に交付を受けておくことで、医療機関の窓口での支払いを最初から自己負担限度額に抑えることができる証明書です。
高額療養費が「後から払い戻しを受ける制度」であるのに対し、限度額適用認定証は「最初から限度額しか支払わない制度」です。一時的な資金負担を避けたい場合に特に有効です。
■ 利用手続きの流れ
加入している健康保険組合または協会けんぽへ「健康保険限度額適用認定申請書」を提出する
「健康保険限度額適用認定証」の交付を受ける(郵送のため数日〜1週間程度かかります)
入院・受診の際に保険証と一緒に医療機関の窓口へ提示する
■ 対象者と注意点
70歳未満の方が対象です(70歳以上の方は高齢受給者証で対応)。
適用は原則として一医療機関ごと、外来と入院は別計算となります。
住民税非課税(区分オ)の方は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要です。
3.高額療養費と限度額適用認定証の違い
2つの制度は同じ「医療費の自己負担を限度額に抑える」という趣旨の制度ですが、仕組みが異なります。
| 比較項目 | 高額療養費 | 限度額適用認定証 |
|---|---|---|
| 支払タイミング | 窓口で一旦全額支払い→後日払い戻し | 窓口での支払いが最初から限度額まで |
| 手続き | 事後申請(診療月の翌月1日から2年以内) | 入院前に事前申請が必要 |
| 資金負担 | 一時的に高額の立替が生じる | 立替不要(資金負担が小さい) |
| 払戻し時期 | 申請から約3ヵ月以上かかる | 該当なし(窓口清算) |
| 適用範囲 | 同月内の複数医療機関の合算も可能 | 原則、一医療機関ごとに適用 |
4.会社として従業員をサポートするポイント
従業員が長期入院することを事前に把握している場合、会社として「限度額適用認定証」の取得を案内することで、従業員の一時的な資金負担を軽減することができます。
社会保険労務士は、従業員への制度説明や手続きサポート、また入院・傷病に関連する各種給付(傷病手当金など)の申請支援も行っています。制度の活用についてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
まとめ
高額療養費制度:窓口で一旦支払い、後日申請して超過分の払い戻しを受ける制度
限度額適用認定証:事前に交付を受けることで、窓口での支払いを最初から限度額に抑える制度
払戻しには3ヵ月以上かかるため、長期入院が見込まれる場合は「限度額適用認定証」の取得が資金面で有利
会社として従業員に情報提供・取得支援を行うことで、安心して治療に専念できる環境づくりにつながります
【岩元事務所】社会保険・労務手続きのご相談はお気軽に
東京都葛飾区高砂 TEL: 03-3608-5421(受付 9:00〜18:00 / 土日祝休)



