保険料調整制度とは? 〜短時間労働者の社会保険加入をスムーズに進めるための新制度〜
お知らせ
令和8年10月から、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大にあわせて、「保険料調整制度」がスタートします。この制度は、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者の保険料負担を事業主が一時的に肩代わりすることで、被保険者の手取り収入の急減を防ぐ仕組みです。
本記事では、制度の概要・対象事業所・対象労働者・保険料の負担割合・手続きの流れについて、社会保険労務士の視点からわかりやすく解説します。
1. 保険料調整制度の概要
保険料調整制度とは、対象となる事業所の事業主が被保険者の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の一部を一時的に肩代わりすることで、短時間労働者の保険料負担を最大3年間にわたり軽減できる制度です。
重要なのは以下の2点です。
- 事業主が一時的に追加負担した保険料は、一定期間経過後に調整(相殺)されるため、最終的に事業主の保険料負担総額は増えません。
- 被保険者が将来受け取る年金額にも影響はありません。あくまで「手取り収入への打撃を和らげるための時限措置」です。
具体例:標準報酬月額88,000円の場合
標準報酬月額が88,000円の方を例にとると、本来の保険料は被保険者・事業主それぞれ月額約12,500円(労使折半)です。
保険料調整制度を利用した場合(制度利用1〜2年目)、被保険者の負担割合は25%となるため、月額約6,250円に軽減されます。差額の約6,250円は事業主が一時的に追加負担(月額合計約18,750円)しますが、この追加分は一定期間後に調整されます。
【ポイント】保険料額はイメージ値です。実際の額は保険料率等により異なります。
2. 対象となる事業所
保険料調整制度の対象となる事業所は、時期によって段階的に広がります。
対象となる事業所のスケジュール
| 対象となる時期 | 対象となる事業所 |
|---|---|
| 令和8年10月1日〜 | 任意特定適用事業所として新たに適用される事業所 |
| 令和9年10月1日〜 | 厚生年金被保険者数36人以上50人以下の事業所(短時間労働者の適用拡大) |
| 令和11年10月1日〜 | 厚生年金被保険者数21人以上35人以下の事業所 |
| 令和14年10月1日〜 | 厚生年金被保険者数11人以上20人以下の事業所 |
| 令和17年10月1日〜 | 厚生年金被保険者数10人以下の事業所 |
重要な点として、令和8年9月30日以前にすでに任意特定適用事業所となっていた事業所は制度の対象外となります。
令和9年10月以降の適用拡大については、厚生年金保険の被保険者数に応じて段階的に対象が拡大されます。自社の被保険者数を確認し、いつから対象となるかを事前に把握しておくことが重要です。
3. 対象となる被保険者
保険料調整制度の対象となる被保険者は、以下の条件をすべて満たす方です。
- 短時間労働者として健康保険・厚生年金保険に加入する被保険者であること
- 標準報酬月額が126,000円以下であること
ここでいう「短時間労働者」とは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満で、一定の要件(賃金月額88,000円以上等)を満たすパートタイマー・アルバイト等を指します。
標準報酬月額126,000円という上限は比較的高めに設定されており、適用拡大により新たに加入する短時間労働者の大部分をカバーする設計となっています。
4. 保険料の負担割合
軽減割合は、被保険者の標準報酬月額に応じて異なります。また、制度利用3年目は軽減割合が半減します。
| 標準報酬月額 | 報酬月額 | 1〜2年目の負担割合 | 3年目の負担割合 |
|---|---|---|---|
| 〜88,000円以下 | 〜93,000円未満 | 被保険者25:事業主75 | 被保険者37.5:事業主62.5 |
| 98,000円 | 93,000〜101,000円未満 | 被保険者30:事業主70 | 被保険者40:事業主60 |
| 104,000円 | 101,000〜107,000円未満 | 被保険者36:事業主64 | 被保険者43:事業主57 |
| 110,000円 | 107,000〜114,000円未満 | 被保険者41:事業主59 | 被保険者45.5:事業主54.5 |
| 118,000円 | 114,000〜122,000円未満 | 被保険者45:事業主55 | 被保険者47.5:事業主52.5 |
| 126,000円 | 122,000〜130,000円未満 | 被保険者48:事業主52 | 被保険者49:事業主51 |
標準報酬月額が低いほど軽減割合が大きくなっており、最低賃金に近い水準で働くパートタイマーほど手厚く保護される設計になっています。3年目は半減することから、被保険者が段階的に通常の負担に移行できるよう配慮されています。
5. 手続き
保険料調整制度を利用するには、事業主からの申し出が必要です。
- 申請期限:事業所が制度の対象となった日から2年以内
- 届書様式・手続きの詳細:厚生労働省から示され次第、日本年金機構のウェブサイトに掲載予定(2025年4月現在)
なお、制度の利用は事業主の任意であり、利用しない場合は通常どおり労使折半で保険料を負担することになります。
【ポイント】届書様式等の詳細が公表され次第、速やかに対応準備を進めることをお勧めします。
6. 社労士からのひとこと
保険料調整制度は、適用拡大に伴う「130万円の壁」問題への対応策の一つとして位置づけられています。従業員の手取り収入の急減を防ぐ一方で、事業主側の負担増も最終的には解消される設計になっており、事業主・被保険者双方にメリットがある制度です。
ただし、制度が適用されるまでの段階的なスケジュールや、申請期限の管理が重要になります。適用拡大の時期が近づいたら、対象となる短時間労働者の洗い出し・標準報酬月額の確認・届出準備を早めに行いましょう。
当事務所では、社会保険の適用拡大対応や保険料調整制度の申請手続きについてサポートしております。お気軽にご相談ください。
参考:日本年金機構「保険料調整制度のご案内」(https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/hokenryochosei.html)



