派遣業の支店・営業所に許可は必要?実態で判断される「派遣元事業所」の基準を解説
お知らせ
東京で労働者派遣業の許可を取得し、事業を運営している企業様から、次のようなご相談をいただくことが増えています。
「大阪に派遣先企業があるのですが、大阪にも事業所を作らなければいけませんか?」
結論から申し上げると、
- 契約締結や派遣元としての業務をすべて東京で行う場合 → 原則として大阪に事業所を新設する必要はありません。
- 大阪で契約締結・登録・雇用管理等の「派遣元業務」を継続的に行う場合 → 大阪にも許可を受けた派遣元事業所の追加が必要になります。
本記事では、実務上の判断ポイントを分かりやすく解説します。
1. そもそも「労働者派遣業許可」とは?
労働者派遣法(第5条)に基づき、労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です。
許可自体は事業主(法人または個人)単位で付与されますが、派遣元業務を行う各事業所ごとに許可を要するという運用がなされています。
労働者派遣をする「事業所」とは、派遣労働者に対して以下の機能を有するものを指します(厚生労働省・行政資料より)。
- 就業条件の明示
- 派遣労働者に係る労働契約の締結、または派遣労働者となろうとする者の登録
- 派遣労働者に係る雇用管理の実施等の事務処理
これらの機能を持つ拠点は、事業所ごとに労働者派遣事業の許可が必要とされています。
つまり、東京本社で許可を取得済みであっても、大阪支店でこれらの業務を行っている場合は、大阪支店についても許可を受けた事業所として届け出る必要が生じます。ここが実務上、最も誤解されやすいポイントです。
2. 大阪に派遣先があるだけなら問題ないケース
次のようなケースでは、大阪への事業所新設は不要です。
ケース①:契約も管理もすべて東京
- 派遣契約の締結は東京本社
- 派遣労働者の登録・雇用管理も東京
- 派遣元管理台帳の作成・保管も東京
- 派遣元責任者も東京に配置
- 大阪は単なる「派遣先」
この場合、派遣元としての機能は東京のみで完結しているため、大阪に新たな事業所を設ける必要はありません。派遣労働者の就業場所が大阪であること自体は、事業所設置義務の直接の根拠にはなりません。
3. 事業所新設が必要になるケース
問題となるのは、次のような場合です。
ケース②:大阪で派遣元業務を継続的に行っている
- 大阪支店の社員が派遣労働者の登録受付を行っている
- 大阪支店の社員が派遣契約を締結している
- 大阪で派遣労働者の雇用管理を実施している
- 大阪で苦情対応等を行っている
- 大阪に派遣元責任者を配置している
厚生労働省の行政資料でも明示されているとおり、本社のみが許可事業所である場合に、支店や営業所等が許可なくこれらの業務を行っている場合は、実質的に労働者派遣事業を行っているとみなされます。
その結果、労働者派遣法違反が疑われ、派遣元・派遣先事業者ともに是正指導の対象となる場合があります。
さらに、無許可営業は**1年以下の懲役または100万円以下の罰金(法第59条)**が科される可能性があるほか、事業停止命令・許可取消しのリスクもあります。
4. なぜ「業務を行う場所」が重要なのか?
派遣元事業所に該当するかどうかの判断基準は、登記上の支店・営業所かどうかではなく、実態として派遣元業務が行われているかどうかです。
具体的には以下が判断材料となります。
- 派遣労働者の登録受付
- 派遣労働者に係る労働契約の締結
- 派遣元責任者の選任・配置
- 雇用管理(勤怠・給与・安全衛生等)の実施
- 苦情処理対応
- 就業条件の明示
「支店登記の有無」や「どの法人名義か」ではなく、どこで派遣元としての実務が継続的に行われているかが判断基準です。
5. よくある誤解
「支店登記していなければ大丈夫」→ 誤り 登記の有無にかかわらず、実態として派遣元業務を行っているかどうかで判断されます。
「営業活動だけなら問題ない」→ 要注意 単発・補助的な営業活動であれば直ちに問題とならない場合もありますが、継続的な勧誘・契約交渉・登録受付等を大阪で行っている場合は、派遣元業務の一環とみなされる可能性があります。個別の実態確認が重要です。
「労働者が現地で働いているから事業所が必要」→ 誤り 派遣労働者の就業場所はあくまで「派遣先」であり、それ自体が派遣元事業所の設置義務を生じさせるわけではありません。
「派遣先も関係ない」→ 誤り 行政資料が明示するとおり、許可のない事業所から派遣を受け入れた派遣先も是正指導の対象となる場合があります。 派遣先企業としても、契約前に派遣元事業所が適正に許可を受けているかを人材サービス総合サイト等で確認することが重要です。
6. 事業所を追加する場合の実務負担
既存の許可を持つ事業主が新たに大阪で事業所を追加する場合は、新規許可申請ではなく、事業所新設に係る変更届(および許可証書換え申請) が原則となります。
主な手続き・要件は以下のとおりです。
- 事務所要件の充足(独立性・専用性)
- 資産要件の確認
- 派遣元責任者の選任
- 東京労働局への変更届・書換え申請
事業所の追加手続きの申請窓口は、本社所在地を管轄する東京労働局となります。
ただし、新設事業所の現地調査は大阪労働局が実施するため、複数の労働局との連携が必要になります。
なお、許可間もない事業所については人材サービス総合サイトへの反映に時間を要する場合があります。確認が必要な場合は、直接管轄労働局の職業安定部需給調整事業課へ問い合わせることをお勧めします。
7. 実務上の安全な運営方法
多拠点展開を予定している企業様には、次のいずれかをお勧めしています。
パターンA:契約・管理はすべて東京に一本化 大阪は補助的な活動にとどめ、派遣元としての実務(登録・契約・雇用管理・苦情対応等)はすべて東京で完結させる。
パターンB:本格展開なら正式に大阪事業所を追加届出 大阪で継続的に業務を行うのであれば、変更届を適切に提出し、許可を受けた事業所として運営する。
許可なく実態として派遣元業務を行っている状態が最もリスクの高い状態です。 派遣元・派遣先双方が是正指導の対象となりうる点にご注意ください。
8. まとめ
| 状況 | 事業所新設 |
|---|---|
| 派遣先が大阪のみ(契約・管理は東京) | 不要 |
| 契約・登録・雇用管理はすべて東京で完結 | 不要 |
| 大阪で派遣労働者の登録受付を実施 | 必要 |
| 大阪で派遣契約を締結・雇用管理を実施 | 必要 |
| 大阪で苦情対応・就業条件明示を実施 | 必要 |
ポイントは「どこで、継続的に派遣元としての業務(登録・契約・雇用管理・苦情対応等)を行っているか」です。
9. 当事務所のサポート内容
当事務所では、以下のサポートをワンストップで提供しています。
- 多拠点展開時のリスク診断(実態確認・適法性判断)
- 派遣事業所追加に係る変更届・書換え申請
- 管理体制整備支援
- 派遣元責任者研修サポート
- 監督指導・是正指導対応
東京本社のままで運営できるのか、それとも大阪事業所の追加届出が必要か。事前に判断することで、後の行政指導リスクを回避できます。
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この記事は、
社会保険労務士岩元事務所が、解説しています。
最終更新日:2026年2月28日



