【令和7年4月施行】配偶者が会社役員の場合の出生後育児休業給付金申請
お知らせ
― なぜ「登記簿」だけでは足りず「課税証明書」が必要なのか?
令和7年4月からスタートする「出生後休業支援給付金(いわゆる出生後育児休業給付金)」。
育児と仕事の両立を後押しする重要な制度ですが、実務の現場ではすでに“ある論点”で混乱が起きています。
それが、
「配偶者が会社役員の場合、何を添付すればいいのか?」
という問題です。
特に顧問先からよくある質問がこちらです。
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役員なら雇用保険に入っていないのは明らかでは?
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登記簿を出せば十分では?
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なぜ市役所の課税証明書まで必要なの?
この記事では、ハローワーク確認に基づき、
実務で迷わないための“正解パターン”を整理します。
1. 出生後育児休業給付金の基本構造
本制度は、
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夫婦双方の育児参加を促進
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男性の育休取得を後押し
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早期の育児関与を支援
する目的で創設されます。
原則は、
夫婦双方が育休を取得すること
を前提とした設計ですが、配偶者が次のような立場の場合は例外扱いとなります。
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自営業者
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フリーランス
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会社役員
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雇用保険非加入者
この場合、
「雇用される労働者ではない」
ことを証明することで要件を満たします。
2. 会社役員はどう扱われるのか?
ハローワークの整理では、会社役員は
「雇用される労働者でない者」
に該当します。
つまり、
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雇用契約はない
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雇用保険の対象外
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役員報酬は労働の対価ではない
という扱いです。
しかし、ここで問題が発生します。
3. なぜ「登記簿」だけでは足りないのか?
実務担当者の感覚では、
「役員=登記簿で証明できる」
と思いがちです。
確かに、履歴事項全部証明書(登記簿)を見れば、
その人が会社役員であることは確認できます。
しかし、ハローワークの実務回答は明確です。
課税証明書は必須
その理由①:所得の内訳確認
会社役員であっても、
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他社でパート勤務している
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アルバイトをしている
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副業で雇用契約を結んでいる
可能性は否定できません。
行政側は、
「労働者としての給与所得が存在していないか」
を確認する必要があります。
登記簿ではそれは分かりません。
その理由②:基準統一
行政実務では、
書類の統一基準を設ける
ことが非常に重視されます。
そのベース資料が、
市町村発行の課税証明書
なのです。
所得区分が明記されているため、
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給与所得
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事業所得
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不動産所得
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雑所得
などを確認できます。
そのため、登記簿の有無にかかわらず、
課税証明書は必須資料
という運用になっています。
4. 実務でぶつかる「表示の壁」
ここで実務上の最大の落とし穴があります。
実は、
役員報酬は税法上「給与所得」に分類される
という点です。
つまり、課税証明書を見ると、
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給与所得あり
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金額のみ表示
という状態になります。
これでは、
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労働者としての給与なのか
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役員報酬なのか
判別がつきません。
5. 実務上の安全な提出セット
そのため、現場での標準対応は次の通りです。
【提出セット】
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直近の課税証明書(必須)
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履歴事項全部証明書(登記簿)
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必要に応じて役員名簿
役割は以下の通りです。
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課税証明書 → 所得区分確認
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登記簿 → 役員である事実の裏付け
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名簿 → 在任状況の補足説明
この“セット提出”が最も補正リスクが低い対応です。
6. 社労士実務で最も重要なポイント
最重要なのは、
事前アナウンス
です。
顧問先の従業員に対し、
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役員でも課税証明書は必要
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市役所で取得が必要
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取得に時間がかかる場合がある
ことを早めに伝えておくことが重要です。
「登記簿があるから大丈夫」という誤解が、
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書類補正
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給付遅延
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不満発生
につながります。
そのたびに補正が発生すると、
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給付決定が遅れる
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顧問満足度が下がる
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事務負担が増える
という悪循環になります。
まとめ
配偶者が会社役員の場合の出生後育児休業給付金申請では、
「課税証明書+登記簿」のセット提出が実務上の正解
です。
✔ 登記簿だけでは足りない
✔ 課税証明書はベース資料
✔ 役員報酬は給与所得扱い
この3点を押さえておくことで、
補正リスクを大幅に減らすことができます。
人事担当者の皆様へ
出生後育児休業給付金は、
単なる書類手続きではなく、
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男性育休推進
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人材定着
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働きやすい企業づくり
に直結する制度です。
制度開始直後は問い合わせが集中することが予想されます。
今のうちに、
「役員配偶者=課税証明書必須」
という運用を社内ルールとして整備しておくことをおすすめします。
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この記事は、
社会保険労務士が、実際の申請・相談事例をもとに解説しています。
最終更新日:2026年2月18日
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