【2026年4月改正予定】雇用保険関係助成金の大幅見直しが発表されました(パブリックコメント解説)
お知らせ
2026年(令和8年)1月26日、厚生労働省より「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案」に関するパブリックコメント(意見募集)が開始されました。 今回の改正案は、来年度、すなわち2026年(令和8年)4月1日からの雇用関連助成金の制度変更に関わる非常に重要な内容を含んでいます。
多くの企業で活用されている「特定求職者雇用開発助成金」や「地域雇用開発助成金」、さらには昨今注目度の高い「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」などの見直しが盛り込まれています。 本記事では、今回公表された改正案の概要をもとに、企業の助成金活用戦略に影響を与える主要な変更点を速報として解説します。
1. 今回の改正の全体像
今回の改正は、2026年度(令和8年度)における雇用情勢の変化や政策課題に対応するため、既存の助成金制度の要件緩和、支給額の見直し、あるいは廃止・統合を行うものです。 特に、以下の5つの助成金において大きな変更が予定されています。
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特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース等)
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地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
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65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース等)
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人材確保等支援助成金(テレワークコース)
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人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備コース)
- 早期再就職支援等助成金
全体的な傾向として、「成長分野への労働移動の促進」「高齢者の多様な働き方の支援」「テレワーク定着への手続き簡素化」といったキーワードが見て取れます。
2. 【重要】特定求職者雇用開発助成金の変更点
雇入れ系助成金の代表格である「特開金(トッカイキン)」こと特定求職者雇用開発助成金について、特に「成長分野人材確保・育成コース」で大きな構造変更が提案されています。
(1)「1事業所あたり」から「1人あたり」への転換
これまで同コースは、対象者を雇い入れた場合に「1事業所あたり定額」での支給という性格が強かった部分がありますが、今回の改正案では**「雇い入れた中途採用者1人当たりの支給」**に見直される予定です。 これにより、成長分野においてまとまった人数の採用を行う企業にとっては、採用人数に応じた助成が受けられるようになり、インセンティブが強化される可能性があります(ただし、1事業所あたりの上限は20人と設定される見込みです)。
(2)「成長要件」による加算
さらに、企業の成長性を評価する要件(生産性の向上や企業全体の平均賃金の上昇等)を満たす事業主に対しては、10万円を加算する措置が新設される予定です。単に人を増やすだけでなく、賃上げや生産性向上を実現している企業をより手厚く支援する姿勢が鮮明になっています。
(3)45歳以上対象の優遇措置(Bコース)の廃止
一方で、縮小される部分もあります。これまで45歳以上の者を中途採用する場合に設けられていた優遇措置(いわゆるBコース)については、廃止される方向で調整が進んでいます。中高年の採用を計画されている企業にとっては、今後の採用計画の見直しが必要になるかもしれません。
(4)60歳以上の雇入れ要件の見直し
「特定就職困難者コース」等において、60歳以上の者を雇い入れる際の要件についても見直しが入る予定です。公共職業安定所(ハローワーク)等の紹介日時点での状況などがより厳密に問われる等の変更が予想されますので、詳細な要件確定を待つ必要があります。
3. テレワークコースの手続きが大幅に簡素化へ!
多くの企業が関心を寄せる「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」についても、使い勝手を良くするためのポジティブな改正案が含まれています。
計画の認定が「不要」に
現行制度では、テレワークを実施するにあたり、事前に「実施計画」を作成し、管轄の労働局長の認定を受ける必要がありました。これが実務上の大きな負担となっていましたが、今回の改正案では「テレワーク勤務の実施に係る計画について、都道府県労働局長の認定を不要とする」という画期的な変更が盛り込まれています。 事前の認定手続きがなくなることで、より機動的にテレワーク環境の整備や機器導入を行い、助成金を申請できるようになることが期待されます。
助成率・助成額の変更
手続きが簡単になる一方で、助成額の計算方法は見直されます。 これまでは経費に対する助成率などが設定されていましたが、改正案では「テレワークを可能とする措置に要した費用の15%(賃上げ要件を満たした場合は25%)」とし、上限額についても「対象労働者数 × 20万円」または「100万円」のいずれか低い額、といった具体的な算定式が示されています。 要件を満たした場合の助成額が自社の投資規模に見合うか、4月以降の試算を改めて行う必要があります。
4. 地域雇用開発助成金の要件緩和
地方での雇用創出を支援する「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」についても、使いやすい方向への変更が見られます。
非正規雇用の対象拡大
これまで、助成対象となる雇入れは原則として「正規雇用労働者」に限定されていました。しかし改正案では、「雇い入れた者の中に正規雇用労働者が少なくとも1人以上いる場合」は、それ以外(非正規雇用労働者など)として雇い入れた労働者も助成対象に含めることができるようになります。 これにより、正社員1名とパートタイマー数名を同時に採用して事業所を立ち上げるようなケースでも、パートタイマー分も含めて助成を受けられる可能性が広がり、地域での柔軟な採用活動を後押しすることになります。
なお、能登半島地震の被災地(七尾市、輪島市など)における特例措置等については、期限を2026年3月31日までとする等の措置期限に関する記述もあり、復興支援のフェーズに合わせた調整が行われています。
5. 高齢者雇用・外国人雇用に関するその他の変更
65歳超雇用推進助成金
「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」において、助成額の変更に加え、「他社による継続雇用制度」の導入に関する助成方法が変わります。これまでの「定率助成」から「定額助成(16万円~105万円)」への変更が予定されており、制度導入にかかるコスト計算の予見性が高まります。自社で定年を迎えた社員を、グループ会社や関連会社で再雇用する仕組みを検討している企業には重要なニュースです。
外国人労働者就労環境整備コース
外国人労働者数が過去最多(令和6年10月時点で約230万人)を更新する中、就労環境の整備を支援する本コースについても、対象事業主の要件や支給額の改正が行われます。外国人材の定着やコミュニケーション促進に力を入れる企業は、新年度の要件を必ずチェックすべきでしょう。
6.早期再就職支援等助成金(UIJターンコース廃止へ)
離職者の早期再就職を支援する「早期再就職支援等助成金」についても、今回の改正案で大きな動きがありました。
(1)UIJターンコースの「廃止」
地方への移住者を雇い入れた際に助成される「UIJターンコース」は、令和7年度(2026年3月末)限りで廃止される見通しとなりました。 パブリックコメントの資料によると「利用実績が少ない」ことが廃止の理由とされています。もし、現在UIJターン採用を計画中で、本助成金の活用を検討されている場合は、2026年3月31日までに雇入れや計画の完了が必要となる可能性があります。駆け込み申請については期限管理がシビアになりますので、早急にご相談ください。
(2)雇入れ支援コース・中途採用拡大コースは「賃上げ」要件がカギ
一方で、離職者を雇い入れる「雇入れ支援コース」や、中途採用比率を高める「中途採用拡大コース」については、存続・再編の方向ですが、要件がより厳格化される傾向にあります。 令和8年度の概算要求等を見ると、「雇入れ時の賃金を雇入れ前と比較して5%以上上昇」など、明確な賃上げ実績が支給要件として強化される見込みです。単なる欠員補充ではなく、「高い処遇での迎え入れ」が助成の必須条件となってきています。
まとめ:2026年度に向けた準備を
今回のパブリックコメントの内容はあくまで「案」の段階ですが、例年、大きな修正なく4月1日に施行されるケースがほとんどです。 経営者・人事担当者の皆様におかれましては、以下の3点をアクションプランとしてご検討ください。
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採用計画の再確認:特に「成長分野」での採用や「45歳以上」の採用を予定している場合、助成金の見込み額が変わる可能性があります。
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テレワーク投資のタイミング:事前の計画認定が不要になる4月以降に実施する方がスムーズか、あるいは現行制度の方が有利か、費用の見積もりとともに比較検討することをお勧めします。
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就業規則等の見直し:高齢者雇用や外国人雇用の環境整備に伴い、評価制度や就業規則の改定が必要になる場合があります。助成金の要件に適合した規定になっているか、早めの確認が必要です。
当事務所では、これら2026年度改正の最新情報に基づき、貴社に最適な助成金活用プランをご提案しております。 「自社が該当するコースはあるか」「4月以降の申請に向けた準備は何が必要か」など、ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年1月29日時点のパブリックコメント(意見募集)段階の情報に基づいています。確定した省令内容や詳細なパンフレット等は、3月下旬以降に厚生労働省より正式発表される予定です。
参考リンク
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厚生労働省:雇用・労働分野の助成金情報
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社会保険労務士・行政書士岩元事務所



