産休・育休中の「手取り」はいくら?厚労省シミュレーションツールの活用法と注意点
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産休・育休中の「手取り」はいくら?厚労省シミュレーションツールの活用法と注意点
「子どもは欲しいけれど、収入が減るのが不安」 「産休・育休中に実際いくらもらえるのか、計算が複雑でわからない」 「会社に聞く前に、自分でざっくりとした金額を知りたい」
これから出産・育児を迎える従業員の方や、そうした従業員を抱える経営者様・人事担当者様から、このようなご相談をよくいただきます。
確かに、日本の社会保険制度は非常に手厚いものの、その仕組みは複雑です。しかし、2024年に厚生労働省から非常に便利なツールが公開されているのをご存知でしょうか?
今回は、厚生労働省の「産休・育休中の経済的支援 かんたん試算ツール」の使い方を解説しつつ、このツールだけでは見落としがちな「資金繰りの注意点」や「社労士に相談すべきポイント」について、プロの視点から詳しく解説します。
1. 厚労省の「かんたん試算ツール」とは?
これまで、産休・育休中の給付金を計算するには、自分で「支給率」を掛け合わせたり、社会保険料の免除分を考慮したりと、非常に手間がかかりました。
そこで登場したのが、厚生労働省が提供する「産休・育休中の経済的支援 かんたん試算ツール」です。
このツールの優れた点は、以下の3つの経済的メリットを「一括で」「手取りベースで」試算できる点です。
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出産手当金(産休中の給与補償)
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育児休業給付金(育休中の給与補償)
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社会保険料の免除(手取りが増える大きな要因)
特に「3. 社会保険料の免除」まで自動計算して、「働いていた時と比べて、実質どのくらいの手取りになるか」を可視化してくれるのが最大の特徴です。
2. たった3分!ツールの使い方と入力のコツ
使い方は非常にシンプルです。お手元に「給与明細」を用意して、以下のステップで入力してみましょう。
ステップ①:あなたの情報を入力
サイトにアクセスし「試算する」ボタンを押すと、以下の項目を求められます。
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出産予定日(または出産日)
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月額給与(額面)
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賞与(ボーナス)の有無と金額
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お住まいの都道府県
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年齢
【社労士のワンポイント】 「月額給与」は、手取りではなく「総支給額(額面)」を入力してください。交通費や残業代も含めた、直近6ヶ月の平均を入れると、より正確な数値に近づきます。
ステップ②:今後の予定を入力
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産前休業の開始日
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育児休業の終了予定日(1歳の誕生日まで、など)
これらを入力するだけで、瞬時にグラフと金額が表示されます。
ステップ③:結果を見る(ここが重要!)
結果画面では、以下の情報が表示されます。
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産休・育休期間中の給付金総額
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社会保険料免除によるメリット額
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「休業前の手取り賃金との比較」
驚かれる方が多いのが、「給料は出ないのに、思ったより手取りが減っていない(働いている時の約8割程度キープできている)」という事実です。これは、給付金が非課税であることと、社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除される効果によるものです。
■入力結果の例(パパの場合)
3. ツールでは分からない「3つの落とし穴」
このツールは非常に優秀ですが、あくまで「試算」です。実際の生活設計や実務においては、このツールだけではカバーできない重要な注意点が3つあります。
ここからは、私私たち社会保険労務士が現場でよくアドバイスさせていただく内容です。
① 「入金タイミング」のラグ(空白期間)
これが最大の注意点です。ツールでは「月額〇〇万円」と表示されますが、このお金は毎月給料日に入るわけではありません。
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出産手当金: 産後休業終了後、申請から1~2ヶ月後(出産から3~4ヶ月後)に一括振込。
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育児休業給付金: 初回は育休開始から2~3ヶ月後。以降は2ヶ月ごとの振り込み。
つまり、「出産してから最初の入金があるまで、数ヶ月間は収入がゼロになる期間がある」ということです。 試算結果の総額だけを見て安心せず、数ヶ月分の生活費を貯蓄で賄えるかどうかのキャッシュフロー計画が不可欠です。
② 受給資格の有無(対象外になるケース)
ツールは誰でも試算できますが、実際には以下の要件を満たしていないと給付金はもらえません。
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雇用保険に加入しているか?
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過去2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あるか?
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(有期契約の場合)育休終了後も雇用継続の見込みがあるか?
特に入社して間もない方や、パート・アルバイトの方は、個別の確認が必要です。「もらえると思っていたのに貰えなかった」という事態を防ぐため、事前に専門家への確認をおすすめします。
③ 住民税は免除されない
社会保険料(健康保険・年金)は免除されますが、「住民税」は免除されません。 住民税は「去年の所得」に対して課税されるため、産休・育休中で収入がなくても、昨年の年収に応じた納付書が届きます(または会社を通じて支払う必要があります)。 この支出を計算に入れておかないと、家計が苦しくなる原因になります。
4. 経営者・人事担当者様へ:このツールをどう活かすか
ここまで従業員様向けの話をしてきましたが、このツールは企業の採用・定着戦略にも非常に役立ちます。
採用面接や面談での活用
「ウチは中小企業だから、大手のような手当は出せない…」と諦めていませんか? 公的な給付金と社会保険料免除を説明し、このツールで具体的な数字を見せることで、**「御社で働き続けても、経済的に安心して子供を産める」**という強力なアピールになります。
複雑な手続きはアウトソーシングが正解
産休・育休の手続きは、申請時期が細かく決まっており、書類も多岐にわたります。
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産前産後休業取得者申出書
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健康保険出産手当金支給申請書
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育児休業給付金支給申請書(2ヶ月ごと)
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社会保険料免除申出書 …etc
これらを総務担当者が通常業務の合間に行うのは大きな負担ですし、万が一申請忘れがあると、従業員様との信頼関係に関わる大問題となります。
また、会社として育児休業を推奨する環境を整備することで、**「両立支援等助成金(出生時両立支援コースなど)」**を受給できる可能性もあります。
5. まとめ:不安な点は社労士にご相談ください
厚労省の「かんたん試算ツール」は、将来のマネープランを立てるための素晴らしい第一歩です。まずは一度、ご自身やご家族の情報を入力してシミュレーションしてみてください。
しかし、実際の申請手続きや、個別の事情(転職したばかり、双子の場合、パパ育休との併用など)に合わせた正確な判断には、専門知識が必要です。
当事務所では、以下のサポートを行っております。
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従業員様向け: 個別の給付金シミュレーションと、わかりやすい制度説明
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企業様向け: 産休・育休申請手続きの代行、就業規則の整備
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助成金サポート: 育児休業取得に関する助成金の提案・申請代行
「ツールの結果を見たけれど、自分の場合はどうなるの?」 「社員から妊娠の報告を受けたけれど、会社として何をすればいい?」
そのような疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。 複雑な制度をわかりやすく紐解き、安心して出産・育児、そして経営に専念できる環境づくりをお手伝いいたします。
【お問い合わせはこちら】
社会保険労務士・行政書士岩元事務所



